九州一の大都市、福岡への旅。グルメ、名所、ショッピングのイメージの強い福岡ですが、市内から少し足を伸ばしてみると日本の原風景ともいうべき美しい田舎町が現れます。
「日本の棚田100選」にも選ばれている「星野村の棚田」は、過去この地に生きた人々の知恵と努力の賜物。このような美しい風景が現代に残されているというのは、日本人としての誇りを大いに感じます。
今回は福岡旅の途中でぜひ足を伸ばしたい星野村への旅をご紹介しましょう。
星野村の棚田とは?
福岡県の南側、大分県との県境に位置する八女市星野村。その名の通り、夜空から降るような満天の星空が見られるスポットとして人気を集めています。人口は3000人ほどの小さな小さな村には、人の手によって作られた美しい風景が残されています。
それが夜空と並んで星野村を代表する風景となっている「棚田」。棚田とは、山や谷間に階段状に作られた水田のことです。山の多い日本では田畑の約8%が棚田となっており全国各地に存在します。しかし、星野村の棚田ほど広大で精巧な造りになっているところは珍しく、「日本の最も美しい村連合」が選ぶ「日本の美しい村」にも名を連ねています。
曲線に流れる美しい棚田
稲作を行う地域、国であれば多く見られる棚田。棚田は大きく分けると2つの種類の分類されます。ひとつが山を切り開く際に出る土で作る「土坡(どは)」型、もうひとつは石を組み上げて作る「石積み」型です。
星野村の棚田はこの石積み型棚田。まず石垣を崩れないように積み上げ、山を削り土地を水平にならし、水が漏れないように粘土で埋め立てて表土を戻し、そして次の石垣を積む・・・この途方も無い作業を繰り返し、12.6ヘクタールもの広さの棚田が作られました。
星野村の棚田は急な斜面に作られているため、山の形に沿うように曲線を描きながら積み上げられているのが特徴。緩やかなカーブを描く棚田は自然と調和し、一層美しく見えます。
人の背より大きな石垣
山間にあり平地が少ない場所に築かれた棚田は横に長く、幅は狭いのが特徴です。少ない平地でいかにして効率よく稲作を行うか、いかにしてすべての田んぼに水を行き渡らせるかを計算しつくされた作りとなっているので、ぜひ遠くからその全貌を見てみましょう。
幅の狭い田んぼには現代のトラクターは入れず、昔ながらの耕運機が使われています。石垣の高さはとても高く、人が作業をしているその背丈よりも遥かに大きな階段状になっています。その数、なんと137段。この棚田を作り上げるのに一体どれほどの時間がかかったのだろう、と思わずにいられません。
季節によって変わる風景
もちろん今も稲作が行われている星野村の棚田は、季節によって風景が大きく変わります。お米の成長に合わせて景色が変わるのは、日本の原風景の最も美しく魅力的なところと言えるでしょう。
春の棚田
春の棚田は田植え前の準備段階。あちこちに菜の花の黄色が現れる中、棚田には水が張られ鏡のように輝いています。特に天気の良い日には空の青が水鏡に反射して、山が真っ青に染まる姿が見られます。
初夏から夏にかけて
初夏になると田植えが行われます。細い棚田の中を人が行き来する姿が見られるこの季節は、石垣の大きさを感じるのにはぴったりの時期です。
田植えが済んで稲が成長を始める7,8月は青々とした緑の眩しい季節です。すべての棚田が一面緑色の絨毯を敷き詰めたかのような壮大さ。山間でありながらも太陽の光をしっかりと受け、ぐんぐん背を伸ばしていきます。
そして実りの秋
秋は言わずもがな、実りの秋。黄色ともオレンジともつかない色に棚田が染まる様子は必見です。周辺の木々も紅葉を始めるほか、彼岸花の燃えるような赤色が所々に見られます。鹿里棚田彼岸花祭りが行われる時期で、多くの観光客が訪れます。
頭を垂れる稲穂の美しさ、耳に聞こえてくる虫の声など秋ならではの美しさを存分に堪能できる季節となっています。都会で暮らしている人であればなおさら、その美しさに心を打たれることでしょう。
冬は霧に包まれる
稲刈りの終わった冬の棚田は、朝霧と雪に包まれてとても幻想的な雰囲気に。霧の中、ぼんやりと浮かび上がる棚田の姿はまさに秘境そのものです。雪の日に棚田が白く染め上げられる様子も格別です。
星野村へと足を伸ばしましょう
初めて目にする風景であっても、感動とともになぜか懐かしさを感じる八女市、星野村の棚田の風景。福岡市から車で約50分の八女インターチェンジへ、そして八女インターチェンジからさらに40分の場所という決してアクセスの良い場所ではありません。
それでも時間をかけて辿り着く価値のある絶景が存在しています。ぜひ福岡市から足を伸ばし、星野村の棚田へと訪れてみましょう。
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