「中古マンション購入? 中古戸建住宅購入?」
人それぞれの考えがありますので一概にどちらが良いという事ではありません。
ここでは、注意点や将来に起きうる事を理解して頂ければ幸いです。
中古マンションについて。
大都市圏や地方、人気のエリア、アクセス等で流通価格も様々、築年数がかなり経ったマンションでも価格が落ちにくいエリアがある事は皆さん何となく承知しているかと思います。
ただし、老朽化に関しては永久に建つマンションはありません。
RC造建築の寿命は、諸説ありますが、国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」によれば、およそ120年、メンテナンスにより150年まで延命できるとしています。
これは建設時期や場所・仕様によって大きな差があるかと思いますが、耐震・水廻りの給排水管の劣化等を考慮すれば、RC系住宅の平均寿命は68年という報告書もあります。
この報告書は建物が実際に存続した年数を追ったもので、私たちの実感に比較的近いものといえるのではないでしょうか。
この事から、多くのマンションが直面するのは「建替え問題」です。
近年、高齢化にも伴いマンションを「終の棲家」とみる居住者が増えていますが、その中でマンションの老朽化は避けられない問題として意識され始めています。
建替えと言ってもそう簡単なものではありません。
高額となる建設費は居住者負担、そしてマンションの建替決議を可決するには「区分所有法」に基づき、住んでいる世帯(区分所有者)の4/5以上の賛成が必要となりますので、多くのマンションで保留・廃案になるケースが多いのです。
これまでに建替えられたマンションの多くは、物件の戸数を増やし、それらの分譲費用で建替費用をまかなうという方法で行われています。
しかし、この方法は立地と容積率(敷地面積に対して、建ててよい床面積の事。建築基準法により用途地域ごとに定められている)に恵まれた物件でなければ実現は難しいでしょう。
高層化が可能であり、且つ増加した住戸が売れる見込みがあること。この二つの条件がそろわなければ住民の負担金ゼロにすることはできません。
つまりマンション建替えは、それによって利益が見込める場合に成功しやすく、そうでない場合は非常にハードルが高いといえます。
このことからマンションの建替え事例は全体の約0.23%程度しかありません。(平成28年末時点)
状況をよく踏まえて慎重に検討される事をお薦めします。
中古戸建住宅について。
注意点というより是非とも検討して頂きたいですね。
ご予算もあるかと思いますが、長く安心・安全に住んで頂くために耐震工事は不可欠です。
記憶に新しい熊本地震、多くの家屋が倒壊し、今なお仮設住宅に住まわれている方々がたくさんおられます。全国でも地震発生率がもっとも低いと位置づけされ、県民も皆さんも「地震よりも台風対策だ」として地震保険に加入していなかった方も多かったようです。
ご家庭の復興遅れはこの点が起因していると思われます。
新築住宅と中古住宅、何が一番違うかと言えば、それは「耐震」です。住宅メーカーを始め、多くの住宅会社が耐震施工を全面的に押し出し販売しています。むしろ耐震施工がない新築住宅販売はあり得ない認識となっています。
しかし、熊本地震はその事を覆す事態となりました。4月14日午後9時26分、熊本地方を震源としたM6.5の地震が発生、前震です。16日午前1時25分、M7.3の揺れが熊本地方一帯を襲いました、いわゆる本震です。その後も震度6~5の余震が相次ぎ、多くの家屋・建築物そしていくつかの新築住宅も倒壊しました。これは「揺れ疲れ」という症状で、大きな地震を何度も受ける事で、構造躯体に緩みが生じ、揺れに対応しきれなくなってしまう現象です。
国が定める耐震基準は、1度目の大きな地震に対しての基準であり、熊本地震のように大きな揺れが連続して発生する事は想定していません。熊本地震も1度目の地震だけに終わっていれば、被害状況は大きく変わっていたでしょう。
この教訓から、いつ来るかわからないだけでなく、連続して起こる大地震に備えるための工事の必要性です。
現状のリフォーム・リノベーション工事における耐震施工技術は精度アップしている会社が増えています。特に、中古木造住宅の耐震施工技術は新築並みに強化できる可能性がありますので検討に値します。会社選びのポイントでもあります。
購入前物件を耐震診断し、リフォーム・リノベーション工事後に評点1.0(耐震基準:一応倒壊しない)以上がクリアできるかの判断ができれば安心ですし、購入判断がしやすくなりますので、耐震施工だけでなく耐震診断もできる会社を選択する必要があります。
先程の「揺れ疲れ」に対する対策に制振工事というものがあります。地震の揺れを軽減する施工方法です。可能であれば耐震プラス制振のW(ダブル)工法を行うとよりベストです。
熊本地震で震源地に近い場所で、この方法で施工された家は瓦1枚も落ちておらず、周辺が倒壊しているにも関わらず、被害はほとんどなく避難場所にも行く事はなかったそうです。
まさしく「命を守る技術」です。